【おすすめ科学絵本】「からだと健康」の世界を知る10冊

【おすすめ科学絵本⑨】「からだと健康」の世界を知る10冊

このコーナーでは、幼いお子さんから小学生のための科学の本をご紹介します。

 

今月は、「からだと健康」を知る本です。新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威をふるっています。このウイルスについて説明した子ども向けの本は、これから出版されるでしょう。

 

今回は、子どもたちが自分のからだや健康ばかりでなく、ほかの人の健康についても目を向けるきっかけになるような本をご紹介します。

(科学読物研究会 坂口美佳子)

あっ!ケガした

きゅうきゅうばこ 新版

やまだまこと/文 やぎゅうげんいちろう/絵

きゅうきゅうばこ 新版

福音館書店

2017年

もし、ころんですりむいたら、はなぢがでたら、たんこぶができたら、しびれたら……、子どもたちが経験しがちな12種類のけがの手当てが紹介されている。

 

絵もシンプルで、いざというとき、絵を見ただけでやるべきことがわかる。最新の手当ての方法を紹介するために、30年ぶりに新版となった。子どものためのけがの手当ての本として、一家に一冊、手元に置いておきたい本。

はなのあなの使い道

はなのあなのはなし

やぎゅうげんいちろう/作

はなのあなのはなし

福音館書店

1982年

風邪をひいて鼻水が出てくるところは、はなのあな。ゴリラは鼻水が乾いたらべりっと剥がして食べるとか。イルカのはなのあなは頭の上にひとつだけ。

 

はなのあなっていろいろな形があって、それぞれに使い道がある。見返しいっぱいにギッシリ整列した黒い丸は、はなのあな? それとも本文にも出てくるはなくそ? 子どもには何と見えるのか、思わず笑ってしまう愉快な本。

さあ!深呼吸しよう

すってはいてよいくうき

かこさとし/作

すってはいてよいくうき

童心社

1980年

日本の科学絵本では第一人者の本。長く読み継がれている。

 

生物が生きていくには空気を体に取り入れなければならないということを、幼い子どもが理解できる言葉遣いとペースで、きちんと説明してくれる。レトロな絵も温かく、呼吸器それぞれの働きばかりでなく、光合成や環境問題まで子どもたちにしっかり伝えてくれる。

けがやびょうきを知るために

『からだのふしぎ けがとびょうきのナゾ』

にしもとおさむ/作・絵 清水洋美/構成・文 坂井建雄/監修

『からだのふしぎ けがとびょうきのナゾ』

世界文化社

2019年

ミクロの探検隊がけがやびょうきのなぞを探りに出発。学級閉鎖の場面では、ウイルスの増え方、発熱のしくみ、ウイルス退治の方法などを紹介する。

 

他にも熱中症や花粉症、スマホの使い過ぎなど、全部で9つのけがやびょうきを説明する。ページ全面を埋め尽くす楽しいイラストも、小学校低学年の子どもの理解を助けてくれる。

人工呼吸器ってどうやってつくるの?

医療をささえる町工場 世界にほこる日本の町工場2

日本の町工場シリーズ編集委員会/著

医療をささえる町工場 世界にほこる日本の町工場2

文溪堂

2014年

日本の町工場の技術はすばらしい。この本では、大人用や動物用の人工呼吸器ばかりでなく、新生児用の人工呼吸器が、どこでどう開発されて製品になっているのか、豊富な写真でわかりやすく紹介されている。

 

他にも、義肢、世界一細い手術針、歯石除去機、痛くない注射針などをつくる24社の町工場の紹介がある。

 

ウイルスってなに?

『のぞいてみようウイルス・細菌・真菌図鑑1 小さくてふしぎなウイルスのふしぎ』

北元憲利/著

『のぞいてみようウイルス・細菌・真菌図鑑1 小さくてふしぎなウイルスのふしぎ』

ミネルヴァ書房

2014年

小学校高学年向けのウイルスの本。ウイルスと細菌や真菌との違い、ワクチンの発見の歴史、免疫のしくみ、ウイルスの伝染や進化のしかた、そして30種ものウイルスについて一つずつ説明がある。

 

裏表紙の見返しには、いつ、どこで、どんなウイルスが大きな事件を起したか、一目でわかる世界地図もあって興味深い。

 

★コロナウイルスならこの本も
『もっとしりたい!微生物大図鑑1 なぞがいっぱいウイルスの世界』北元憲利/著 ミネルヴァ書房 2015年

同じ著者。感染症の広がりを防ぐ学校のルール、感染症の侵入を防ぐルール、PCR検査法のしくみ、コロナウイルス(新型ではない)についても説明がある。

 

免疫力をアップするには

うんちの正体 菌は人類をすくう

坂元志歩/著 鱈耳郎/絵

うんちの正体 菌は人類をすくう

ポプラ社

2015年

子どもたちは「うんち」という言葉にすぐ反応するが、大人でもこのタイトルにはそそられる。NASAが行っていたうんちとおならの研究、腸内細菌や腸の免疫細胞の姿と働きなどが、楽しさいっぱいの絵からもわかる。

 

最後に、生物多様性が大切なのは、ヒトの体にいる細菌についても同じだと結んでいる。無重力の宇宙でのうんちの出し方を、1時間かけて実際に確かめる方法も載っている。

生物学っておもしろい

生物学 生命ってすごい!

ダン・グリーン/文 サイモン・バシャー/絵 新美景子/訳

生物学 生命ってすごい!

玉川大学出版部

2010年

60種もの生物学に関するキャラクターが大集合、自慢大会が始まる。

 

ウイルスは「ぼくは最悪なオジャマ虫-きみの体にずけずけ押し入って、細胞を乗っ取って言いなりにさせてしまう」、RNAは「陰でこっそり糸を引く謎めいた存在」。

 

ルビがついた説明を読みながら、理解が進む。ユーモラスなイラストも、いろいろな情報を表していてみあきない。
 

からだを知ろう!

いろいろいろんなからだのほん

メアリ・ホフマン/文 ロス・アスクィス/絵 すぎもとえみ/訳

いろいろいろんなからだのほん

少年写真新聞社

2019年

背の高い人、赤ちゃん、車いすの人など、人のからだの多様性を淡いトーンの絵でたっぷりと見せてくれる。しかも、男の子か女の子かはっきりさせなくてもかまわないなどと、視点を変えた見方も紹介している。

 

遊び心にあふれた絵を見ていくだけでも、自分のからだを見直すと同時に、他の人のからだも大事にしたいと気づかせてくれる本。

 

健康を守る社会のしくみがわかる

いのちと福祉のねだん

藤田千枝/監修 坂口美佳子/著

いのちと福祉のねだん

大月書店

2017年

学校の健康診断、日本から世界に広がった母子手帳、色のユニバーサルデザイン、生活保護にとって代わるかもしれないともいわれるベーシックインカム、健康保険や年金のしくみなど、健康や福祉に関する事項を小学校高学年から理解できるように紹介している。

 

明るく見やすい図版も豊富。

科学読物研究会
運営委員
坂口美佳子

 

「子どものための科学の本の研究、普及」を目的に活動する科学読物研究会(1968年発足/現在の会員は280名)の運営委員。

 

「科学の本と体験のキャッチボールを」をモットーに、2018年度は年間270回活動。幼児からの科学あそびや、小・中・大学の授業、図書館員や児童館職員、読み聞かせボランテイア対象の研修会なども行う。科学読物研究会、仮説実験授業研究会「開楽クラブ」会員。

 

著書に『理科読をはじめよう』(滝川洋二編、共著、岩波書店)、『科学のふしぎ 1』(フレーベル館)、『いのちと福祉のねだん』(大月書店)など。