図書館司書が選んだイチオシ本

埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本!【学校司書だより①】

埼玉県立浦和第一女子高校

はじめまして。埼玉県立浦和第一女子高校(浦和一女)で、学校司書をしている木下通子です。

 

昨年、浦和一女に転勤して来ました。浦和一女は、創立120年を迎える女子伝統校で、多くの生徒が国公立大学に進学します。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定校で理系女子が多い高校です。

 

私は根っからの文系で、本来、理数系は苦手なのですが、司書として理系女子に本を薦める立場になって、理系の本をたくさん手に取るようになりました。

 

その中で出会ったのが、『科学道100冊』です。『科学道100冊』は本校図書館では常設で展示しているのですが、科学といっても哲学的な読み物から絵本までジャンルが幅広く、文系の私でも読みやすい本が多いのが魅力です。

 

このコラムでは、本のご紹介や、浦和一女の図書館が理系の授業とどんなコラボレーションをしているかをお伝えしていけたらと思います。

高校図書館司書の仕事とは?

埼玉県には約150の県立高校があります。司書は県立図書館と同採用で、全日制の高校図書館には司書資格を持った専任の学校司書が毎日勤務しています。司書は、本と人(利用者)をつなぐのがいちばんの仕事。司書は、本をよく知っていて、子ども達一人一人の興味関心に寄り添い、必要な本や情報を手渡すのが大きな役割です。

 

高校図書館司書が本を選ぶときには、学校の教育目標、先生方の授業、子ども達の進路、子どもの興味関心、いま知ってほしい情報など、いろいろなことに目配りし、収集方針にあわせて選書をします。

 

今日も、「泣ける本ないですか?」とレファレンスをしてきた生徒がいました。「なんで泣きたいの?」と聞いたら、「涙活(るいかつ)」と言われて思わず笑ってしまったのですが、辻村深月さんが好きと言ったので、『朝が来る』(文芸春秋)を紹介しました。

埼玉県立浦和第一女子高校

 

高校図書館司書が選んだイチオシ本2018

私たち埼玉県の高校司書は、毎年2月に「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本」を発表しています。この企画は2010年に始まり、これまでに9回開催されました。

 

2018年のイチオシ本は、2017年11月~2018年10月までに出版された本を対象に、118名から180タイトルの応募がありました。それぞれが熱いコメント付きで本を推薦し、選ばれた本のベスト10はこんな感じです。

高校図書館司書 おすすめ本 ランキング

一位に輝いたのは『リアルサイズ古生物図鑑 古生代編』(土屋健/著 技術評論社)でした。

 

実はイチオシ本第一回目(2010年)の第一位に選ばれたのは、『世界でいちばん美しい元素図鑑』(創元社)でした。委員の私たちも本屋大賞などを見ても文芸書が隆盛の中で、図鑑が一位になるとは驚きましたが、今回も第一位は図鑑。

 

このイチオシ本を選ぶ時には「生徒が自分ではあまり手に取らないけれど、高校生に薦めたい、考えさせられる本や学びを助ける本」を念頭に選びます。ここが学校図書館ならではの選書です。

第1位『リアルサイズ古生物図鑑』 の魅力

古生物のサイズが実感できる! リアルサイズ古生物図鑑 古生代編

土屋健/著

リアルサイズ古生物図鑑

技術評論社

2018年7月

『リアルサイズ古生物図鑑 古生代編』(土屋健/著 技術評論社)は、黒板消し、電卓、バスなど、私たち日常生活にあるものと、古生物のサイズを比べ、リアルサイズで紹介していて、見たことのない古生物がいっきに身近に感じられます。

 

手にとった生徒はみんな笑いながらページをめくっていました。この7月には、『リアルサイズ古生物図鑑 中生代編』が出版され、いよいよ恐竜が登場しました。

 

発表にあたって、著者の土屋健さんと、監修者をゲストに招き、裏話を伺ったのですが、本物のサイズを正確に再現するために、一つ一つ3Dプリンタで実物を作ったという話は驚きでした。この裏話は、埼玉県高校図書館フェスティバルのホームページからご覧いただけます。

みえるとか みえないとか

ヨシタケシンスケ/さく 伊藤亜紗/そうだん

みえるとか みえないとか

アリス館

2018年7月

一位以外にも、理系の本がたくさん入っています。たとえば、3位に選ばれた『みえるとか みえないとか』は「目の見えない人は世界をどう見ているのか?」という“障害”をテーマに扱った絵本。

 

6位に選ばれた『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』は、「AI時代に大人になる学生たちに、これからの生き方を考えてほしい」という思いで選出されました。

 

ホームページでは、司書からの推薦コメントもお読みいただけます。また、著者コメントが入ったPOPなどの展示材料もダウンロードしてお使いいただけますので、ぜひ各学校で活用してください。

AI vs 教科書が読めない子どもたち

新井紀子

AI vs 教科書が読めない子どもたち

東洋経済新報社

2018年2月

木下通子(きのした・みちこ)

1985年に埼玉県の司書採用試験に合格し埼玉県の高校司書となる。現在、埼玉県立浦和第一女子高校担当部長兼主任司書。ビブリオバトル普及委員、埼玉県高校図書館フェスティバル実行委員長などを兼務し、図書館関係の活動に携わっている。著書に『読みたい心に火をつけろ!――学校図書館大活用術 (岩波ジュニア新書)』ほか。