こんにちは。埼玉県立浦和第一女子高校(浦和一女)で、学校司書をしている木下通子(きのした・みちこ)です。
このコラムでは、高校図書館の「学び」への取り組みや、学校司書の仕事、そして高校生へのおすすめ本をお伝えしていきます。
SSH・SGH合同研究成果発表会
2月8日(土)に、「SSH・SGH合同 研究成果発表会」が行われました。SSH・SGHの指定校になっている全国の学校の先生方、埼玉県内の中学生や保護者にもご来校いただきました。
まず最初に各教室・体育館・視聴覚室で口頭発表、ポスター発表が行われましたが、この時間に図書館では、「現代アートの可能性 ~READ THE BOOK」と題したSGHのポスター発表が行われました。現代の女性問題とアートを融合した企画で、マララ・ユスフザイさんが銃撃されたことと関連し、本で銃の形を作り、みんなが女性問題の本を読むことで銃をなくそうという発表です。多くの生徒が関心を持って聞きに来ていました。
その後、体育館で行われた全体発表では、図書館で展示をしていた「私たち高校生が解決する日本のジェンダー問題」の発表が行われました。展示を見に来てくれた埼玉県男女共同参画推進センター with you さいたま情報ライブラリーの司書さんが、今回発表をした生徒たちに「男女共同参画基礎講座」を受講しませんか?と声をかけてくださり、with you さいたまを見学することになりました。図書館と図書館がつながって、学びが広がることが本当にうれしいです。
探究学習支援プログラム
実はこの合同発表会、図書館でもスライド展示をしました。「探究学習支援プログラム」として、「正しい情報を獲得しよう!」というスライドです。たとえば、いま、世界中で感染が懸念されている新型コロナウイルスについても、情報がたくさんあって、正しい情報を見極めることが必要です。司書のいる学校図書館では、子ども達に情報の選び方についても伝えているので、そのスライドを出したところ、他県の先生から、学校図書館でもこんな活動をしているんですね、と驚かれました。
情報を自分でしっかり考えて受けとめる力のことを「メディアリテラシー」と言いますが、メディアリテラシーに関してとてもわかりやすく書かれているのが、この本です。
この本は子ども向きの本ですが、ものの見方をわかりやすく教えてくれる本です。情報は伝える人が選んだ順番によって、印象がガラっと変わる。立場が変わると見え方が変わる。など、身近な事例を使いながら教えてくれます。
そうそうせっかく全国のみなさんがいらっしゃるので、「科学道100冊」の本も展示してパンフレットもお配りしました。さすがに、SSHの学校の方は「科学道」はご存じでしたが、見学に来た中学生が熱心にみてくれて、パンフレットをもらっていきました。
埼玉県の高校司書が選んだイチオシ本2019
この「学校司書だより」第1回でご紹介した「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本」2019年版が2月14日(金)に発表になりました。
今年のラインナップについてはホームページ「埼玉県高校図書フェスティバル」をご覧ください。
今回は、理系の本は入っていませんが、第一位に選ばれた『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』や5位になった『82年生まれ、キム・ジヨン』など、多文化・多様性がテーマになった本がランクインしました。
一位の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、イギリス在住の日本人、ブレイティみかこさんが、イギリスの中学校に通う息子との日常を描いたノンフィクションです。「多様性っていいこと?」と息子に聞かれて「多様性は物事をややこしくするし、喧嘩や衝突が起こるし、ない方が楽だけれど、楽ばっかりしていると無知になるから。」と答えたブレイティさんの言葉に、島国日本に暮らす私はズキュンと来ました。
イチオシ本は動画で発表しているのですが、ブレイティみかこさんへインタビューした動画も特設ページからご覧いただけます。どんな本がランクインしているかとあわせて、ぜひ、「埼玉県高校図書館フェスティバル」のホームページをご覧ください。
今年はイチオシ本が10周年。その感謝を込めて、いままで埼玉県内にしかお配りしていなかったPOPとパンフレットを、今年は全国の方にも実費でおわけすることになりました。あなたの図書館でもイチオシ本を展示してみませんか?詳しくはホームページ「埼玉県高校図書館フェスティバル」をご覧ください。
木下通子(きのした・みちこ)
1985年に埼玉県の司書採用試験に合格し埼玉県の高校司書となる。現在、埼玉県立浦和第一女子高校担当部長兼主任司書。ビブリオバトル普及委員、埼玉県高校図書館フェスティバル実行委員長などを兼務し、図書館関係の活動に携わっている。著書に『読みたい心に火をつけろ!――学校図書館大活用術 (岩波ジュニア新書)』ほか。