【図書館司書だより⑪】ウィズコロナでの学校図書館

【図書館司書だより⑪】ウィズコロナでの学校図書館

こんにちは。埼玉県立浦和第一女子高校(浦和一女)で、学校司書をしている木下通子です。

 

このコラムでは、高校図書館の「学び」への取り組みや、学校司書の仕事、そして高校生へのおすすめ本をお伝えしていきます。

 

コロナ禍で学校図書館にも変化が

みなさま、あけましておめでとうございます。2021年もよろしくお願いいたします。首都圏では緊急事態宣言が発令され落ち着かない状況ですが、学校は休校にならずに新学期を迎えることができました。

 

昨年は、春に長い休校があったせいで、一年がいつもの半分くらいだった気がします。それでも、2学期は通常の学校生活を送ることができました。浦和一女の図書館はICT(情報通信技術)化が一気に進み、現在、電子書籍の導入に向けて準備しています。

雑誌付録抽選の様子

浦和一女の図書館では、購読している雑誌の付録を生徒に配布しています。これまでは希望する30名程度の生徒が担当の図書委員とでジャンケンをして勝者に配布していたのですが、感染対策で抽選方式に変えたら、合計で700通近くの応募がありました(本校の生徒は1100名ほどです)。主催した図書委員たちもびっくり。これまで以上の数の生徒が参加できたのは良かったかもしれません。人気の付録は「鬼滅の刃」の関連グッズでした。
 

10月末の土曜授業では、今年度はじめて、リアルでビブリオバトル(お気に入りの本をそれぞれ紹介し、最も読みたくなった本=チャンプ本を、投票で決定する書評会)を行うこともできました。感染対策をしながら、久しぶりにみんなで本の話ができた楽しい時間でした。当日は1年生を中心に約20名の生徒が参加し、チャンプ本には『スズメバチの黄色』(KADOKAWA)が選ばれました。この本は『ニンジャスレイヤー』という人気ラノベシリーズのスピンオフ作品で、ヤクザやハッカーが事件に巻き込まれていくエンターテインメント小説です。

 

図書館総合展はオンライン開催に

学外のさまざまなイベントもオンライン開催に変更されました。毎年11月上旬の3日間で開催される図書館総合展は、全国の図書館関係者のお祭りです。例年はパシフィコ横浜で行われますが、今年は11月の1カ月間かけてオンラインで開催されました。特設サイトではさまざまな団体が図書館にまつわるイベントを企画し、なんと200以上のフォーラムが配信されました。
 

リアルに集まれない寂しさはありましたが、いままで遠くて参加できなかった北海道や九州・沖縄のみなさんから、オンラインだから参加できたという声も聞きました。

 

私は学校図書館関係者を応援するため、「みちねこチャンネル!」というタイトルで、私立の中高一貫校を中心とした学校図書館に関するイベントを紹介するフォーラムを開催しました。フォーラムでは私が進行役として、画面越しで各学校の担当者につなぎながら、これから実施されるイベントを紹介しました。

 

当日は配信をしながら、グラフィックレコーディング(講演や打ち合わせの内容を、その場で文字とイラストを使って記録する方法)で「学校関係図書館イベント一覧」をつくりました。「オンライン図書館見学会」「図書委員による学校図書館案内」など、盛りだくさんです。

図書館総合展の2020学校図書館関係イベント一覧

図書館総合展は11月末で終了しましたが、アーカイブ配信で見ることができるフォーラムもいくつか残っているので、興味がある方はのぞいてみてください。

第22回図書館総合展_ONLINE(外部リンク)

 

宇宙に思いをはせる3冊

さて、冬は星空を眺めるにはもってこいの季節です。昨年12月22日には木星と土星が397年ぶりに大接近しました。寒空の下で天体観測をした人も多かったのではないでしょうか。

 
また、12月6日には小惑星探査機「はやぶさ2」が約50億キロメートルの航行を終えて、6年ぶりに地球に帰還しました。小惑星の岩石を乗せたカプセルもオーストラリアに無事着地したそうで、これからの研究に期待がかかります。

 
そんな話題をきっかけに、今回は「科学道100冊2020」のテーマのひとつ「宇宙フロンティア」の中から、お薦めの本を3冊ご紹介します。

 

1冊目は『宇宙のすがたを科学する』。

 

この本は大きく3つの章に分かれています。「これまでの宇宙」では、ニュートンやアインシュタインをはじめとした先人たちが宇宙についてどう考えてきたかが描かれています。「現在の宇宙」では、今日の科学的観測にもとづいた宇宙図が示され、「未来の宇宙」では、“あり得るかもしれない宇宙の姿”について、科学者の仮説が紹介されています。仕掛け絵本なので、めくるたびに楽しさがあります。

 

宇宙にはロマンがあるとよく言いますが、「宇宙ってどんな姿をしているんだろう?」と想像しながらこの本をめくると、多様な宇宙の姿にワクワクしてきます。

宇宙のすがたを科学する

ギヨーム・デュプラ/著 渡辺滋人/訳

宇宙のすがたを科学する

創元社

2018年11月

 

2冊目にご紹介するのは『天空の地図』。

 

古代から人類は空を見上げ、そこに夢を投影してきました。この本は約200枚の緻密な絵画や天文写真を通じて、人類が天空の世界をどう表してきたかを紹介した本です。

 
古代エジプトの宇宙観がわかる紀元前12世紀の天井画から、中世ヨーロッパの写本に示される世界図、世界初の月の写真やNASAが撮影した接触銀河まで、多彩な画像が楽しめます。ゴッホの『星月夜』も掲載されている、アートとサイエンスを一緒に語っている貴重な本。読み進めるなかで、天文史を体感できます。

天空の地図

アン・ルーニー/著ナショナル ジオグラフィック/編集 鈴木 和博/訳

天空の地図

日経ナショナルジオグラフィック社

2018年3月

 

最後は『宇宙には、だれかいますか?』。

 

生物学、化学、物理学、生命科学、天文学などを専門にする科学者18人に「宇宙には、だれがいますか?=地球外生命体はいますか?」と質問をしている本です。

 

宇宙における生命の研究は「アストロバイオロジー」といって、新しい分野だそうです。もともと、それぞれの分野で活躍してきた研究者が、旧来の学問分野ではカバーできないので、それぞれの領域を融合して、地球外生命体の謎に挑んでいるということです。

 

18人の研究者たちへの質問は「ご自身の研究内容について教えてください」「生命の定義について、独自の見解を教えてください」「地球外生命体が発見されるのはどんな所でしょうか?」といったものから、「地球外生命体が見つかりました。どういうアクションをしますか?」というちょっとおもしろい質問もあって、真面目に答えている研究者の方もいれば、「研究者にはしゃべりたがりが多いので、周囲に言いまくるでしょうね。まずは、TwitterやFacebookでつぶやいちゃうかも」(P114)と答えている方もいて、笑っちゃいました。科学者の個性も感じられる、楽しい本です。

宇宙には、だれかいますか?

佐藤 勝彦/監 縣 秀彦/編

宇宙には、だれかいますか?

ディスカヴァー・トゥエンティワン

2017年2月

コロナ禍で気軽に外出できないこの冬は、読書で壮大な宇宙に思いをはせてみてはいかがでしょう。

木下通子(きのした・みちこ)

1985年に埼玉県の司書採用試験に合格し埼玉県の高校司書となる。現在、埼玉県立浦和第一女子高校担当部長兼主任司書。ビブリオバトル普及委員、埼玉県高校図書館フェスティバル実行委員長などを兼務し、図書館関係の活動に携わっている。著書に『読みたい心に火をつけろ!――学校図書館大活用術 (岩波ジュニア新書)』ほか。