このコーナーでは、幼いお子さんから小学生のための科学の本をご紹介します。
今回のテーマは「天気」。四季の変化が美しい日本ですが、徐々に日も長くなり冬から春に移り変わっていくこの時期は、とくに気持ちもワクワクしてきます。
なぜ天気は変わるのか、明日はどんな天気になるのか。暮らしと直結している天気について、子どもたちの興味をかきたて、疑問に答える本をご紹介します。
(科学読物研究会 坂口美佳子)
明日はお天気になるかな?
「明日はいいお天気になるかな?」と子どもがつぶやいたら、一緒にこの絵本を読もう。例えば「夕焼けは晴れ」「朝焼けは雨」「星がまたたくと風」「ツバメが低く飛ぶと雨」など簡単な天気の見立て方が13個、紹介されている。
なぜ、明日のお天気がそうなるのかという理由が、見開きページいっぱいの絵とともに説明されていてわかりやすい。雲の動きや風向きをみて、天気を予想する楽しさに気づくことができる。
雪の結晶はこんなにも美しい
雪の結晶写真の先駆者・吉田六郎さんが撮影した雪の結晶のクローズアップ写真と、詩人・谷川俊太郎さんの言葉がリズミカルに組み合わさった写真絵本。雪の結晶の輝く美しさを余すところなく伝えている。
この本を子どもたちに読み聞かせると、ひとつとして同じものはない結晶の形に、みんな思わず見入ってしまう。「たべたいな なめたらあまい かな?」と読むと、「あまくないよ、水だもん!」と元気な声が返ってくる。
雪についてどれだけのことを知っているのだろう?
あたたかなタッチで描かれた絵本。雪はどんな役割をしているのだろうと疑問をもった子どもたちは、雪の中の温度と気温を比べたりしながら、雪の働きや、雪と動植物との関わりを学んでいく。
巻末には「雪をつくる粒ってどんなもの?」「雪の結晶にはどんな形があるの?」など、質問が掲載されており、雪の専門家・高橋庸哉さん(本書の翻訳者)が解説している。
結晶はどのようにできるのか?
雪の結晶はどのようにしてできるのか?雲にまじっている小さなほこりや灰などの「ちり」に水蒸気がくっつくところからはじまり、結晶に成長していく過程をコマ送りのような絵で説明している。
星印のような結晶、板のような結晶、柱のような結晶など、形の違う結晶を分類し、実際の大きさや、できる条件なども紹介している。巻末には「雪の結晶の観察の仕方」が載っているので、体験とセットで楽しめる。
びしゃびしゃになって雨と遊ぼう!
夏にいきなり降ってきた雨。迫力満点の雨粒が地面ではねて、土のにおいが立ち上る。傘をさすと「じゃばばば」「ざばああああ」と騒々しい音。ついに傘を捨てて全身で雨を浴びる!
幼い子どもが五感をフルに使って激しい雨を楽しむ様子がいきいきと描かれた絵本。迫力のある絵と切れのいいオノマトペで、大人にとっても子どもの頃のワクワクする気持ちを思い出させてくれる1冊。雨が待ち遠しくなる。
★雨と遊びたくなった人は
『雨、あめ』 ピーター・スピアー/作 評論社 1984年(Amazon)
30年以上読み継がれている、字のない絵本。お姉ちゃんと弟が雨の中で自由に遊びまわる。水たまりで遊んだり、葉っぱの雨粒を取ってみたり、雨の日ならではの楽しみがたくさん描かれている。
雲をながめて想像してみよう
「あの雲なあに?」という子どもの問いに、「天狗の座布団かな」「竜のすみかだよ」「シャボン雲だよ。カミナリさまのお母さんが洗濯をしているのかもしれないね」と想像をふくらませていく。
子どもが雲に興味を持ったときに、自由な発想で寄り添うことのできる楽しい絵本。読んだ後は、実際の雲を見上げて一緒にお話を作りたくなる。
天気の仕組みがまるっとわかる
雲、雨、雪、風、台風、竜巻、雷、虹などの気象や、四季の天気、地球温暖化や天気予報の仕組み、天気図まで、トピックごとに説明されていて、天気に関する幅広い知識を学ぶことができる。
日本の天気予報にはさまざまな機器が使われていることもわかる。親しみやすい絵と図で、子どもにもわかりやすい。内容が盛りだくさんなので、興味のあるページから読んでみよう。
雲を観察してみよう
雲をはじめ、雨、雪、虹、雷などを観察する時のポイントが具体的に紹介されていて、子どもが天気のことを自分で調べたいと思ったときに頼りになる1冊。
「10種類の雲の見分け方」「雲の観察ノートの作り方」「小麦粉を使って雨粒の大きさを測る方法」など、自由研究のネタにもなる。カラー写真とイラストが多用されていてわかりやすい。
空の青にはこんな理由があった
地球の空が青く見える理由を、大気の存在、光の性質、目の構造まで、順に取り上げて丁寧に説明している。昼間の空の色と夕焼けの色が違う理由や、雲が白い理由も、イラストを使ってわかりやすく解き明かしてくれる。
さらに、地球以外の星から見る空の紹介もある。「大気がない月の空は、昼でも真っ暗」「火星の昼間の空はピンク色に見えることがある。夕焼けは青」などNASA(アメリカ航空宇宙局)の写真付きで楽しめる。
天気予報の最前線がわかる!
大気の動きからは身近な天気だけでなく、未来の気候も予想でき、地球温暖化の予測も行われている。スーパーコンピュータを使った計算で天気を予測する方法や、それにはどういう計算のやり方がいいのか(これをシミュレーションモデルといいます)といった説明もあり、気象学の最前線を知ることができる1冊。
筑波大学で気象を研究する日下博幸博士のいきいきとした文章から、研究の楽しさも伝わってくる。写真やイラストがふんだんに使われていて、小学生でも読みやすい科学読物。
科学読物研究会
運営委員
坂口美佳子
「子どものための科学の本の研究、普及」を目的に活動する科学読物研究会(1968年発足/現在の会員は280名)の運営委員。
「科学の本と体験のキャッチボールを」をモットーに、年間270回ほど活動。幼児からの科学あそびや、小・中・大学の授業、図書館員や児童館職員、読み聞かせボランティア対象の研修会なども行う。科学読物研究会、仮説実験授業研究会「開楽クラブ」会員。
著書に『理科読をはじめよう』(滝川洋二編、共著、岩波書店)、『科学のふしぎ1』(フレーベル館)、『いのちと福祉のねだん』『健康と福祉をまもるきまり』(大月書店)など。