【学校司書だより⑤】苦手なジャンルに挑戦~読んで楽しむ数学本

数学が楽しくなる本~苦手なジャンルに挑戦【学校司書だより⑤】

こんにちは。埼玉県立浦和第一女子高校(浦和一女)で、学校司書をしている木下通子(きのした・みちこ)です。

 

このコラムでは、高校図書館の「学び」への取り組みや、学校司書の仕事、そして高校生へのおすすめ本をお伝えしていきます。

2020年になりました

気がつけば1月も残すところ1週間を切りましたが、今年もよろしくお願いします。

オリンピックイヤーの今年ですが、進学校にとっては、まずはセンター試験。ほとんどの生徒が国公立大学を目指しているうちの3年生にとっては、まさに勝負の月です。

 

実は年末にこんなおもしろいことがありました。

本校の美術部と浦和警察署とご近所にある調宮神社(つきのみやじんじゃ)がコラボレーションした「調宮神社御朱印風・年賀状スタンプ」の作成です。 埼玉県立浦和第一女子高校 図書館 調宮神社とのコラボ1

振り込め詐欺防止が主な目的だったそうですが、調宮神社の御利益をいただき、若い世代を含め多くの人に広まってほしいとのことで、うちの美術部が浦和警察署から依頼され作りました。調宮神社はうさぎをお祭りするめずらしい神社で、うさぎのイラストをモチーフに描かれています。

埼玉県立浦和第一女子高校 図書館 調宮神社とのコラボ2

このスタンプを図書館に置きませんか?と美術の先生に声をかけていただき、ご利益あるから合格祈願も願っちゃおうということで、合格祈願、必勝台紙も作り、スタンプを設置したところ、生徒はもとより見学に来ている高校受験の中学生もスタンプを押していきました。

埼玉県立浦和第一女子高校 図書館 調宮神社とのコラボ3

図書館司書として季節行事として行っているのが、折り紙のお守りプレゼントです。今年は限定60名に配布。新着図書案内で配布開始日を告知すると、あっという間になくなります。作り方については、『学校図書館のアイデア&テクニック』(秋田倫子/著、少年写真新聞社)74-77Pに掲載されていますので、よかったら作ってみませんか?

埼玉県立浦和第一女子高校 図書館 調宮神社とのコラボ4

学校図書館のアイデア&テクニック

秋田倫子/著

学校図書館のアイデア&テクニック

少年写真新聞社

2017年

数学を楽しもう

科学道100冊で紹介されている本は、難しい本ばかりでうちの生徒には無理無理と思っている学校図書館関係者の方もいるかもしれません。

実は、科学道100冊では、マンガも紹介されているのをご存知ですか?そこで、今回は2019年のテーマ本【美しい数学】の中に掲載されている『はじめアルゴリズム』(三原和人/著、講談社)をご紹介します。数学が楽しく、好きになる本ばかりです。

 

関口ハジメは、米作島に住む小学5年生。米作島出身の老数学者・内田豊に数学の才能を見出され、親元を離れて京都に移り住み、内田先生に数学を習うことになります。自分の感覚で数学を楽しんでいるハジメが、内田先生と出会うことで理論を学び成長していく物語です。

 

ハジメのライバルとしてエリート数学少年・手嶋ナナオが登場したり、ハジメの小学校でのエピソードが描かれたり、数学のマンガですから数式や定理の解説も出てくるのですが、それを飛ばしても楽しめます。とにかく、作者は数学が嫌いな人にも数学の世界観や数学の楽しさを知ってもらいたいと思っていて、その愛が伝わるマンガなのです。

 

巻末には数学の楽しさを伝えるおまけページがあったり、カバーの袖に「数学者列伝」を書かれたり、数学科出身の数学愛にあふれた数学が楽しくなるマンガです。

 

 

いまは学校図書館にもマンガが普通に置かれる時代です。うちの図書館でもマンガが1000冊ほど置かれており、生徒は勉強の息抜きに、学習の手引きとしてマンガを活用しています。マンガを入れたいけれど、どんなマンガがいいかわからないという方には、こんなサイトもあります。

【外部リンク:これも学習マンガだ

はじめアルゴリズム

三原和人/著

はじめアルゴリズム

講談社

2017年

 

前任校の生徒たちに人気があった数学をテーマにしたライトノベルもあります。

 

『浜村渚の計算ノート』(青柳碧人/著、講談社文庫)です。こちらも作者が数学の楽しさを子どもたちに伝えたいと書き始めた数学ミステリーです。

 

少年犯罪の元凶になるからと、数学が排除される日本の義務教育に反発し、数学者 高木源一郎が組織した「黒い三角定規」というテロ集団を阻止するため、警察庁に特別対策本部が設置された。そこに迎え入れられた天才数学中学生 浜村渚が数学を使いながら、事件を解決していきます。

 

この本も数学の公式や基礎的な考え方を教えてくれる本ですが、ミステリー仕立てになっているので読みやすく、数学が苦手でも楽しめる本として人気がありました。

 

 

数学をテーマにした本を最後にもう一冊。

『数の日本史』(伊達宗行/著、日本経済新聞出版社)です。この本は、この科学道100冊で紹介されて初めて知りました。この本は日本人と数のかかわりあいを、第一章の縄文時代から最終章、第八章の戦後までを追って紹介している本です。歴史好きな人は歴史の本として読むこともできます。

読み手の心をくすぐる小見出しで、全部を通して読まなくても、気になる内容のところを拾い読みするのにも適している本です。

 

 

私はバリバリ文系の司書なのですが、理系の生徒や科学道のエッセイを書くおかげで、理系の本を手に取る機会が増えました。2020年も読みやすくて身近な本を学校図書館の活動とともにご紹介していきます。どうぞ、よろしくお願いします。

浜村渚の計算ノート

青柳碧人/著

浜村渚の計算ノート

講談社文庫

2011年

数の日本史

伊達宗行/著

数の日本史

日本経済新聞出版社

2007年

 

木下通子(きのした・みちこ)

1985年に埼玉県の司書採用試験に合格し埼玉県の高校司書となる。現在、埼玉県立浦和第一女子高校担当部長兼主任司書。ビブリオバトル普及委員、埼玉県高校図書館フェスティバル実行委員長などを兼務し、図書館関係の活動に携わっている。著書に『読みたい心に火をつけろ!――学校図書館大活用術 (岩波ジュニア新書)』ほか。