こんにちは。埼玉県立浦和第一女子高校(浦和一女)で、学校司書をしている木下通子です。
このコラムでは、高校図書館の「学び」への取り組みや、学校司書の仕事、そして高校生へのおすすめ本をお伝えしていきます。
学習成果発表会を開催
9月も暑い毎日が続いていましたが、秋分の日を過ぎたらぐっと涼しくなりました。暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったものです。
本校はいつも8月下旬に文化祭を行っていますが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から文化祭は中止になり、生徒会の発案で非公開の学習成果発表会が行われました。文化系の部活動と各クラスなどを合計して全57組が発表に参加。生徒はあらかじめ決められた見学ルートを回ることで密を避け、発表会を楽しみました。
図書館では、図書委員会が本校の古い卒業生である児童文学者の石井桃子さん(1907-2008)の記録映画を上映しました。石井桃子さんは童話『ノンちゃん雲に乗る』の著者であり、『くまのプーさん』や『ピーターラビット』などの翻訳も手掛けた、子どもの文学の可能性を広げた人です。
ほかにも、有志で参加した先生と生徒の弦楽器演奏が行われ、にぎやかな一日になりました。
「科学道100冊 2020」が発表!
9月18日に「科学道100冊 2020」が発表になりました!我が校でも図書館に特設コーナーを設けて展示をしています。
今年のテーマ本は、「驚異のカラダ」18冊、「宇宙フロンティア」16冊、「世界を変えた科学者」16冊の50冊。今回は「驚異のカラダ」から、特に読みやすいおすすめの2冊をご紹介します。
最初は大人気のマンガ、『はたらく細胞』。通常、学校図書館ではマンガは入れにくいのですが、科学道100冊に選ばれるとマンガも学校図書館に置けるので、司書さんたちは喜んでいることと思います。
『はたらく細胞』は、作者の清水茜さんが、当時高校生の妹から「細胞について覚えたいので漫画を描いて」と頼まれ、細胞を擬人化したキャラクターを作ったことから始まったそうです。
非常に人気が出たことから、清水茜さん以外の著者も加わって、『はたらく細菌』『はたらかない細胞』『はたらく血小板ちゃん』『はたらく細胞LADY』などシリーズ化され、30冊以上が出版されています。アニメ化もされた影響で、理系の本が苦手な生徒にも愛されている作品です。
もう一冊は、『BODY 世にも美しい人体図鑑』です。今回選ばれた18冊はビジュアルが美しい本が多く、どれを見ていてもワクワクするのですが、この本は数字とインフォグラフィックで人体のしくみを説明していて、小学校高学年くらいから楽しめる本だと思います。
全部で8章に分かれていて、第8章は「人体と医療」。たとえば「あなたを襲う健康リスク」というページでは、アレルギー、栄養、外傷、遺伝など、体調不良の原因となるカテゴリーが9つあげられていて、「健康とは?」と考えるきっかけを与えてくれます。
豆知識も豊富で生徒たちの興味関心を広げるようなキーワードがたくさん出てくるので、探究学習をするときの最初のきっかけとしても使いやすい本だと思います。巻末には索引もあるので、キーワードから検索することもできます。
探究型読書 「クエストリーディング®NOTE」
「科学道100冊 2020」とあわせて発表された「クエストリーディング®NOTE」。前回のコラムでもご紹介したとおり、本校では先行してパイロット版を生徒に配布し、使った感想を募集しました。読書記録というと堅苦しい感じがしますが、このノートは気軽に書ける工夫がされています。
ノートは3つのパートから構成されています。パート1は「科学道クラシックス」の読書記録が書き込めるようになっていて便利です。パート2は科学道以外の本の記録用としても使えるようになっています。パート3はPOPを書くコーナーなので、図書館用にPOPを書いてもらい、掲示してお友だちに本を勧めるというような使い方もできます。
※画像はパイロット版です。内容は多少変更される予定です。
生徒からは、「レイアウトがとても見やすく、一冊一冊のコーナーがあるのでとても書きやすかった」「心に引っかかったポイントを書くことで、友達に説明しやすくなった」「自分が読んだ本を自由に記述することで、今まで読んだ本が一目でわかるのが良かった」との感想が寄せられました。今後も継続して使ってもらいたいと思います。
木下通子(きのした・みちこ)
1985年に埼玉県の司書採用試験に合格し埼玉県の高校司書となる。現在、埼玉県立浦和第一女子高校担当部長兼主任司書。ビブリオバトル普及委員、埼玉県高校図書館フェスティバル実行委員長などを兼務し、図書館関係の活動に携わっている。著書に『読みたい心に火をつけろ!――学校図書館大活用術 (岩波ジュニア新書)』ほか。