寒さが増して、間もなくお正月です。年も改まるとすがすがしく感じるものですね。
今月は、お正月を楽しむための科学の本、絵本をご紹介します。
お正月に楽しみたい科学本、絵本
幼い子どもから小学生までを対象にしていますが、大人の方にも思わぬ発見のある本です。
お正月休みにゆっくりページを開いて、本の奥深さを味わってみませんか。(科学読物研究会・坂口美佳子)
しめかざりのほんとうの意味、知ってる?
なぜお正月にしめかざりを飾るのか、どんなわらで作るのか、しめかざりに使う縄とふつうの縄はどこが違うのか? こうした疑問に、わかりやすい絵と簡潔な文ですっきりと答えてくれる。
北海道から沖縄まで全国各地のさまざまなしめかざりの絵を見ると、巧みな造形美に、その土地で培われたわら文化の豊かさが伝わってくる。
たわら、つる、かめ、しゃくし、うま、ほうじゅ、へび、1ページに1つずつ大きく描かれたしめかざりに子どもたちから歓声が上がる本。
★しめかざりならこの本も
『わら加工の絵本』みやざき きよし/へん みずかみ みのり/え 農山漁村文化協会 2006年 本体価格2500円
わらの歴史、文化、使い方、加工の方法、わらの世界を余すところなく伝える。
『しめかざり 新年の願いを結ぶかたち』森須磨子/著 工作舎 2017年 本体価格2500円
シックな黒地に端正なしめかざりの写真が約120点、飾りを取った素の形が美しい。大人向けだが、写真はこどもも楽しめる。
みぢかなみかんのヒ・ミ・ツ
ページをめくるたびに姿を変えるみかんに、子どもたちの目は釘づけになる。
皮のクローズアップから、大写しのみかん1個、皮をむかれた丸ごと1個、1房、1房分の小さなツブツブがいっぱいに並んで、最後はジュース。へたの裏側の筋の数だけ房ができる様子も、鮮やかな写真で見せてくれる。
日本で見られる22種類ものみかんの仲間のカラー写真もあって、身近なみかんを知る入門書。
★みかんならこの本も
『ミカンの絵本』かわせけんじ/へん いしまるちさと/え 農山漁村文化協会 2003年 本体価格2500円
もっとミカンを知りたくなったら、ミカン博士になれる本。育て方も歴史もわかる。
『あたらしいみかんのむきかた』[1]岡田好弘/作 小学館 2010年 本体価格1000円
みかんの皮をひとつながりでうまくむくと、こんな形に!大人も挑戦。皮むきで遊べる本。
お雑煮を食べる前に読みたい!
お正月といえば、おもち。杵と臼がなくても、ボウルとすりこぎを使ったもちのつき方や、日本全国に伝わるいろいろなもち、なぜ人生の節目にもちを食べるのか、もちのデンプンの性質や簡単な実験方法、おいしいもちのつき方など、読んでいると思わずお腹が鳴ってくる。
おもちワールドにどっぷり浸る本。
「犬猿の仲」のゆらいは十二支にあり!
ね・うし・とら・・・何どし?と、子どもが興味を持ち始めたら、この本。
十二支の始まりに関する本はたくさん出版されているが、温かみのある楽しい絵と、豊かな方言ののどかな語り口はお正月にふさわしい。
猫がねずみを追い回す意味や、犬猿の仲もさらっと描かれている。
★十二支ならこの本も
『十二支のはやくちことばえほん』高畠純/作 教育画劇 2008年 本体価格1000円
早口言葉で初笑い、親子で楽しめる本。他にことわざやしりとりの本もある。
『きみはなにどし?』加納信雄/文 U.G.サトー/絵 福音館書店 1998年 品切れ中
甲骨文字や十干十二支、外国の十二支、暦、還暦の説明もある。
おやこで読みたい「行事」のえほん
お正月から始まって大みそかまで、四季のさまざまな行事を5人家族が紹介してくれる。
行事の来歴や、行事にまつわる食べもの、遊びなどが、愛らしくユーモラスな絵と文で描かれている。
主な行事のない6月と10月は、雨と落ち葉の季節ならではの遊びが紹介されていて、1年中たっぷり楽しめる。
★暦ならこの本も
『お月さまのこよみ絵本』千葉望/文 阿部伸二/絵 理論社 2016年 本体価格1400円
月の出ない新月を1月1日とした旧暦では、七夕の日はいつも22時ごろに月が沈む。旧暦なら行事の性格がよくわかる。2026年までの「旧暦で行事をたのしむカレンダー」付き。
江戸の暮らしにタイムスリップ!
江戸の庶民の暮らしを、行商人の売り声から眺めるユニークな本。
お正月には、縁起のいい宝船の絵やすごろく、羽根つきの羽、凧売りの声、「さござい」という売り声でやってくる子どもに人気のアメやおもちゃの当たる「宝引き」の声も響いていたとか。
今もまだ記憶に残る「金魚売り」など季節ごとに31種の行商人とその売り声が、少しレトロなイラストと読みやすい文章で紹介されている。
北斎でアートの感性を研こう!
めでたいといえば富士山だが、さまざまな富士を描き続けた天才絵師、葛飾北斎の富士山を愉快に楽しく紹介する本。絵の細部も、斬新な色の美しさも、構図の迫力も伝わってくる。江戸時代の人々の様子もわかって、どの絵も見飽きない。
世界中の画家にインスピレーションを与えた北斎の富士をゆっくり鑑賞しよう。
★北斎の富士ならこの本も
『北斎の富士』辻惟雄/監修 西村和子/文 パトリック・ケアリー/英訳監修 山内久明/英訳 山内玲子/英訳 島優/英訳 博雅堂出版 2013年 本体価格2000円
落ち着いた紙面で北斎の生涯もわかる。英語の対訳もあるので海外へのおみやげにも。
あやとり一本でこんなに遊べる!
こたつみかん×あやとり。お正月らしいが、年中、電車の中でもベッドの上でもどこでも遊べるあやとりは、昔から人気がある。
この本は、無限にいろいろな形が作れるあやとりの第一歩。ひもの掛け方から始まって、小指をうまくつかう「ちょう」、両手と口まで使う「とんぼ」など一筋縄ではいかないものも紹介されていて、子どものチャレンジ精神もかき立てる。
★世界のあやとりを知りたいならこの本も
『たのしいあやとりスタート 世界のあやとりがわかる』野口廣/著 つちや書店 2013年 本体価格1195円
ガイアナ、南アフリカ、オーストラリア、パプアニューギニアなど世界中のあやとりを紹介。
つくって・まわして・ぐるぐるひろがる独楽の世界!
日本は、変わった形の独楽や技がたくさんある国。この本には、世界の独楽の写真、古代エジプトからの独楽の歴史、独楽の作り方、回し方、技、児童館で大人気のベイゴマの紐の巻き方まで、ていねいな説明で紹介されている。
つくって遊びたくなる。
令和最初のお正月を「ていねい」にむかえませんか?
懐かしい日本のお正月を迎える準備と風景が、落ちついたあたたかな絵で描かれている。
こたつにもぐったり、障子を張り替えたり、一家総出でにぎやかな餅つき、お供えのお餅やしめ飾りを飾って、年越しそばを食べてから除夜の鐘を突きにお寺へお参り。
ていねいなお正月の迎え方に日々の暮らしを反省する気持ちもわいてくる。子どもに伝えたいお正月の本。
科学読物研究会
運営委員長
坂口 美佳子
「子どものための科学の本の研究、普及」を目的に活動する科学読物研究会(1968年発足/現在の会員は280名)で、運営委員長をつとめる。
「科学の本と体験のキャッチボールを」をモットーに、2018年度は年間270回活動。幼児からの科学あそびや、小・中・大学の授業、図書館員や児童館職員、読み聞かせボランテイア対象の研修会なども行う。科学読物研究会、仮説実験授業研究会「開楽クラブ」会員。著書に『理科読をはじめよう』(滝川洋二編、共著、岩波書店)、『科学のふしぎ 1』(フレーベル館)、『いのちと福祉のねだん』(大月書店)など。