高3受験生にもオススメしたい理系本

高3受験生にもオススメしたい理系本

こんにちは。埼玉県立浦和第一女子高校(浦和一女)で、学校司書をしている木下通子(きのした・みちこ)です。

 

今回の「学校司書だより③」では、高校図書館の「学び」への取り組みや、学校司書の仕事、そして高校生へのおすすめ本をお伝えしていきます。農学を幅広く学べる生命科学の本から、科学が嫌いな人に向けた理系の入門書まで幅広くご用意しました。

AO入試や公募推薦には、興味に沿う本を。

ハロウィーンが終わったら、街はあっという間にクリスマスになりました。うちの図書館も入口に大きなツリーを出して、クリスマス色に模様替えです。

 

3年生にとっては、この時期はAO入試や公募推薦の入試の時期でもあります。先日も農学系の学部を受験する3年生が「読んでおくと役に立つ資料はありますか?」と本を探しに来ました。進路指導の先生に、本のことは司書に相談するようにとアドバイスされたそうです。

 

話を聞いてみると、TPPなどの農業関連の項目についての考えや、なぜ、農業に興味を持ったのかという基本的なことを書く論文試験だそう。こういう時は、まず、新聞記事での情報検索をオススメします。

クリスマスの図書館

新聞記事や雑誌記事が検索している様子

新聞記事の有料データーベースは新聞各社から出ています。キーワードを入れると関連する新聞記事や雑誌記事が検索できるので、とても便利です。

 

本は、読みやすい高校生向けの新書を中心に何冊か紹介しました。特に生徒が興味を持ったのが、岩波ジュニア新書の『農学が世界を救う!』です。

 

この本は3人の研究者の共著ですが、農学部でどんなことが学べるのかというところから、生命科学や環境科学と農学の関わりまで、幅広く農学のことが書かれています。

 

『農学が世界を救う!』

生源寺眞一、太田寛行、安田弘法(編著)

農学が世界を救う!

岩波書店

2017年

 

理科教員オススメの本

授業風景

受験生に「図書館に行ってごらん」と言ってもらえるためには、先生との信頼関係が大切です。浦和一女では、図書館を使った授業も積極的に行っています。先生は教科(授業)の専門家。私たち司書は、本の専門家。お互いの専門性を認め合って連携が生まれます。ところが、専門的な本は、先生の方がくわしいものもあって、この絵本も理科の先生から購入リクエストをされるまで知りませんでした。

ほうさんちゅう

松岡篤/監修 かんちくたかこ/文

ほうさんちゅう

アリス館

2019年

放散虫というから、虫なのかと思ったら、絵本をひらいたら海の中にいる生きものでした!

 

この本は写真絵本で、顕微鏡で見た放散虫の姿がたくさん描かれています。みんな、形が違っていてとてもキレイです。骨がガラスでできていて、すべて化石なんですって! 先生は授業で放散虫のことをとりあげて、生徒に見せたいとのこと。

 

うちの生徒は理系が多いほうですが、それでも数学や理科は難しいという先入観を持っている生徒もたくさんいます。そんな生徒にこんな絵本を見せたら、興味をもつきっかけになりそうです。

そんな話をしていたら、先生が「この本もおもしろいよ」と教えてくれたのが、『気になる科学』です。

 

気になる科学

元村有希子/著

気になる科学

毎日新聞社

2016年

この本は、現在、毎日新聞で論説委員をしている元村有希子さんが、科学環境部にいたときに書かれた理系のコラムです。身近な疑問や話題をとりあげてやさしく解説しています。

 

新聞の紙面で掲載されたブログに加筆・編集した本なので、時事問題に科学的な視点が盛り込まれ、語り口も軽妙で読みやすいです。東日本大震災の原発事故を取材した取材日記も掲載されていて考えさせられた本でした。

 

実はこの元村さんが今年、中高校生向けに新書を出しました。『カガク力を強くする!』 (岩波ジュニア新書)。
科学は嫌い!わからないという人に向けて書かれた入門書です。あわせてオススメします。

カガク力を強くする!

元村有希子/著

カガク力を強くする!

岩波書店

2019年

科学道100冊を科学に興味をもつキッカケに

浦和一女の図書館でも「科学道100冊2019」の展示をしています。その中で、科学者の視点で書かれたエッセイとして紹介されているのが、科学道クラシックスの中の『科学と科学者のはなし―寺田寅彦エッセイ集』です。

科学と科学者のはなし―寺田寅彦エッセイ集

池内了/編

科学と科学者のはなし 寺田寅彦エッセイ集

岩波少年文庫

2000年

 

科学者であり文筆家であった寺田寅彦は、物理教師であった田丸卓郎と英語教師をしていた夏目金之助(夏目漱石)と出会ったことで科学と文学に興味を持ちます。寺田寅彦の生きた時代は、明治・大正の頃ですが、なんと、大正時代に理化学研究所の研究員をやっていたこともあるそうです。

 

このエッセイは子ども向けとして編纂されたものなので、とても読みやすい。夏目漱石との思い出話もでてきます。私がおもしろかったのは、電車の混雑の考察。なぜ、電車が混むのかというのを科学的な視点で解説しています。

 

真面目な生徒ほど、一冊全部読み切らなくちゃと思ってしまいますが、こういうエッセイはつまみ読みしてもいいんです。図書館の本ならなおさら、自分がおもしろいと思うところだけ読んで、返せばいいのですから。なにかを調べたり、探したりするときには目次を見て、自分にとって必要な内容が書いてあるかを見ていくことも大切です。本にたくさんふれあうことで、養われる力です。

 

木下通子(きのした・みちこ)

1985年に埼玉県の司書採用試験に合格し埼玉県の高校司書となる。現在、埼玉県立浦和第一女子高校担当部長兼主任司書。ビブリオバトル普及委員、埼玉県高校図書館フェスティバル実行委員長などを兼務し、図書館関係の活動に携わっている。著書に『読みたい心に火をつけろ!――学校図書館大活用術 (岩波ジュニア新書)』ほか。