「PickUp!科学道」では、これまでの科学道100冊のラインナップの中からテーマに沿って、特におすすめしたい本をご紹介します。
今回のテーマは「大人も学べる、科学絵本」。優れた科学絵本は、要点が分かりやすく表現されていて、「もっと知りたい」という知的好奇心を刺激してくれます。
生命の成り立ちから進化論、印刷術や南極大陸冒険まで、さまざまな角度から楽しく学べる絵本を厳選しました。知っているつもりのテーマでも、読むうちにきっと「そうだったのか!」と楽しい驚きがあるはずです。
人間も動物も、見え方はそれぞれ違う
犬やネコも私たちと同じように世界を見ているのだろうか?
本書はこれまでの研究成果に基づき、動物の目に世界はどのように映っているかを描き分けた視覚絵本。仕掛け部分をめくることで、それぞれの生物が見ている世界を体験できる。
猫はひどい近眼で、馬は真正面がよく見えないが350度も見渡せる視界を持つ。ヘビは動きを敏感に察知する特殊な目を持ち、種類によっては赤外線をも感じ取れる。同じ場所にいても、見えているものは全然違う。そこからは生物たちの生存戦略をうかがうこともできる。
地球のかたちは、どんなかたち?
今では「地球が丸い」という事実は誰もが知っている。しかし、昔はどう考えられていたのだろうか?
この仕掛け絵本では、それぞれの時代、地域で、人びとがどのように地球の姿を想像してきたかを知ることができる。アフリカのフォン族の長老が語るには、地球はヘビの上にのっている。エスキモーのシャーマンは、海の中に天国があるという。かの有名なコロンブスは洋梨の形をしていると考えた。ほかにも三角形や四角形、お椀型、箱に入った地球など、古今東西さまざまな世界のイメージが登場。あらためて、人間の想像力に舌を巻く。
生命のバトンは、どうやって巡ってきた?
約35億年前、地球上に初めて生命が誕生した。そして長い月日が経ち、約500万年前にようやく人類が誕生する。
地球誕生から古生物の時代、恐竜時代を経て、私たちが生きる現在までの生命の歴史を劇場形式で紹介する絵巻物のような1冊。舞台のシーンが次々に切り替わり、時代の主人公が入れ替わる。地球上で紡がれてきた壮大な生命の歴史を感じられる貴重な絵本。
宇宙のはじまりから考える、人間とは何か?
人間とは何か?私たちはなぜ生まれてきたのか?人間の身体はどのように作られているのか?本書は、「人間の歴史」「人体の構造」「人間の文化史」などの視点から人間存在そのものについて考える、スケールの大きな絵本。
ホモサピエンスが誕生した背景に始まり、骨や筋肉、内臓など身体の機能について、さらには人間の歴史や文化史までを図解しながら明快に紹介。生物の歴史の中で人間を描くことで、人間の未来についても考えることができる。
子どもも大人も学べるダーウィンの「進化論」
1859年に出版されたダーウィンの『種の起源』は、「神が万物を創造した」というキリスト教の世界観を一変させた。
生物学最大の理論ともいえる進化論を、分かりやすくかみ砕いた科学絵本。やわらかなイラストや図解で、生存競争や自然選択、生きものの類似性など、一見難解な進化論の大事なポイントを理解できる。
巻末には「DNAと遺伝子」「突然変異」などの用語解説のほか、おすすめの本も紹介されていて、大人も進化論について改めて学び直せる。ダーウィンがどのようにアイディアを持ち、思索を深めたか、追体験してほしい。
グーテンベルクの活版印刷誕生の物語
ルネサンス三大発明の一つである「活版印刷技術」は、1450年頃にドイツのグーテンベルクによって発明され、以後、知的文化の礎となった。本書は、その印刷技術が作られた工程や活版印刷の仕組みに迫った歴史絵本。
ぼろきれと骨から紙を作り、ススとアマニ油からインクを生み出し、鉛と錫から活字を作る。紙に文字が印刷されて、職人たちが、かざり文字を加えて色をつける。そうしてできた本は、世界の歴史を大きく変えた。当時の人々の暮らしぶりや服装などもイラストによって表現され、目で歴史を楽しむこともできる。
未知の大陸を探検する、勇気と冒険のノンフィクション
1914年、アーネスト・シャクルトン隊長は世界初の南極大陸横断を達成すべく南極に向かう。しかし流氷帯に差し掛かると船はやがて氷に閉じ込められ、28人の乗組員たちは身動きが取れなくなってしまう。シャクルトンはこの逆境に果敢に立ち向かい、いくつもの困難をくぐり抜けて全員を生還させた。
嵐の海での漂流、1年半におよぶ孤立、危険な山岳地帯踏破。本書は、そんなシャクルトン冒険を細かな筆致で描く。未知に挑み、知恵と情熱で苦難を乗り越える冒険譚は、子どもから大人まで挑戦しようとする人に勇気をくれる。